建物を劣化から守り、長期間維持する為に行うのが塗装工事です。塗装工事する事で、建物表面は水、
太陽光線、カビの発生等から守られています。中でも建物にとって、一番の外敵は水です。一般的な環
境において、水は雨と湿気です。水は建物に浸透すれば建築部材を腐食させ、これを長期間放置すれば
、内部に向けて浸入し、時には建物の強度を奪う大敵です。建物の一番外側(外部表面)に塗装工事を
施すことで形成される僅かな厚みの塗膜の性能によって、長い年月、建物を水の浸入から守って行く。
これが一番大切な塗装工事のポイントであり、建物の耐用年数はこの防水性能に大きな影響を受けてい
ます。ですから、斑の無い均一な塗膜を形成する為の塗装技術は、塗料本来の機能を発揮する為
には非常に大切なものです。「適切な時期に」「適切な塗料を」「適切な工程に従って」「適切
に施工する」事が大切です。次に掲載する写真は決して珍しいものではありません。既に劣化が
進み、水の浸入を確実に食い止める事ができなくなった状態のものです。放置すれば、このよう
な状態に至るという一般的な例として掲載したものです。このような事になる前に、お早目の
対処をご検討下さい。 塗装工事の遅れは、水の浸入を招き、建物全体の耐用年数を著しく低下
させる場合があるものです。
次に掲載する内容は、日頃、私達が目にするものばかりであり、決して極端な例を集めたものではありません。
1・外壁表面の劣化(チョーキング検査)
既存外壁表面の劣化の程度を検査する為の、一番簡単な検査方法です。外壁であれば、塗装工事を終え
てから、10年程度経過した頃に現れる症状です。軽く指で擦るだけで、細かい粉が指に付着するよう
になります。これは、塗装された塗料が経年変化により粉体状に劣化したものです。本来の機能である
、下地を保護する為の撥水効果は完全に失われている状態です。このような症状を確認された時には、
下地の種類に関わらず、早めの塗装工事をお考え下さい。この状態を更に放置しますと下、3の状態へ
と繋がります。
2・外壁の目地シールの検査
外壁サイデイングボードの目地(隣り合うボードとの隙間にはゴムのように弾性のあるシール材が打設
されています。経年変化により、硬化、収縮する性質があり、ご覧の様にサイデイングボードとの間に
隙間を生じさせます。隙間より内部に侵入した雨水は、防水処理が施されていないサイデイングボード
の断面からボード内へと浸透します。水を含んだボードは膨らみ、脆くなります。放置すれば、やがて
ボードは交換を要する程に劣化します。更に、内部へ侵入した雨水は、やがて建物の強度を保つ上で、
重要な構造材を腐食させて行きます。シール材は塗料と同じように定期的な改修を要するものです。一
般的には、塗装工事の前工程で打ち替えるものです。工事工程例(住宅塗装)の中で、写真掲載を含めた
工程説明を掲載しておりますので、どうぞ、ご覧下さい。目地の充填剤として使用するシール材には、
建築物に使用する一般的なものとしてウレタンや変性シリコンなどがございます。当社では耐用年数の
長い変性シリコンを日常的に使用しております。
3・サイデイングボードの外壁を放置すると
上の写真は外壁(サイデイングボード)を、長年の間、保守することなく放置した例です。ボード断面
から侵入した雨水は徐々に深部に侵入する事で、やがてボードは膨張し、表面の剥がれや変形を始めま
す。上の写真のような状態になりますと、素地そのものが既に水を含んでおり、塗装工事だけでは完全
な修復ができません。ボードの交換を含めた規模の異なる工事が必要になります。
鉄部(鋼製部材)に発生する錆は見逃せません。
例としてFe(鉄)の錆についてのご説明です。Fe原子と℮-(自由電子)からできた鉄は、雨などの水
(H2O)が触れる事によって℮-(自由電子)が取り込まれてしまい、水、酸素、電子の反応でOH-の
水酸化鉄イオンになります。→電子が奪われた鉄はFe2+の鉄イオンになります。→やがてこれはFe
3+となり、OH-と反応してFe(OH)3となります。→その後、水分(H2O)が無くなる事で錆(
Fe2O3)になります。水(H2O)の酸性が強くなるほど錆は発生しやすく、湿度は高くなるほど錆は
発生しやすくなるものです。更に、塩害地域においては、塩が水と合わさる事により、水の蒸発が妨げ
られる為に、付着した水が長時間、鉄の表面に残存する事で、錆の発生が更に促進されるという性質を
理由として、すぐに広く、深く進行する場合が多いものです。Fe(鉄)を含んだ鋼製品は建物の中でも
特に強度を必要とする部分に多く使用されています。錆の進行により、本来の強度を失い、安全上の問
題になる前の早めの対処が肝心です。鋼製品の塗装工事後の耐久性は、工事前の劣化の状態と塗装工事
の施工技術、使用塗材によって大きな差が生じるものです。錆に気付いたら、可能な限り迅速に対応す
べきです。掲載写真の様に鉄部が欠落した場合には鋼材の溶接などの補修工事が別途必要になります。
建物外部の鋼製部位については、一度劣化が始まると加速的に悪化してゆくものです。安全を守る上で
重要で、しかも十分な強度を必要とする部位(階段や手摺、柱や梁等)に使用されている場合が多いも
のですから、日常的な管理、観察が重要です。
木部塗装の塗装周期は外壁よりも早めにお考え下さい。
建物外部の木製部分には、例えば屋根廻りの破風、ドア、窓回りの枠、ウッドデッキ等があげられます
鉄部同様、木部に施された塗装は、外壁などの塗装と比べて傷みやすいものです。特に破風などは雨や
直射日光に当たる時間が長く、塗替え後の耐用年数は外壁の二分の一以下で計算すべき場合もあります
掲載した写真は、塗装工事後6年経過の破風表面の写真です。劣化の原因は、経年変化による塗膜の劣
化の他に、温度変化に伴う下地木材の伸縮に対して、塗装後硬化し続けて行く塗膜が追従しなくなった
事も剥離の原因と考えられます。このような不具合を遅らせる一つの方法として、施工後の弾性が長期
間残るタイプの塗料を用いる方法や、新設段階ならば、シリコンやウレタン等の表面に塗膜を作るタイ
プの塗料ではなく、防腐効果のある染料型の塗料を染み込ませるタイプの塗装を施す方法があります。
木目を生かした独特な風合となり、塗膜が形成されない塗料ですから剥げる心配がないという訳です。
しかしこれは、顔料系の塗料による塗装が施されていない、主に新築段階等での施工をお考えになるべ
きです。と申しますのは、木材の表面は比較的粗いのもであり、一度塗装した顔料系の塗料を完全に剥
離するというのは、なかなか難しい事です。そして、剥離剤による剥離作業では下地の木材を傷める心
配もあります。費用的にもお勧めできない。施工しても綺麗には仕上がり難い工事となる為、既存同様
にシリコンやウレタン等を用いる塗装仕上げが多いようです。住宅の外部で一番傷みやすいこの部分は
木材よりも、サイデイング素材にも用いられる窯業系の材料が適するように思います。窯業系の材料は
木製破風ほどの伸縮がなく、塗料との密着性も比較的良好だと言えます。
下からは見えない屋根の点検は重要です
築15年経過の屋根(コロニアル)表面の状況です。屋根の防水は、下地に敷き詰められたルーフイン
グシートによって保たれています。ですから、表面の老朽化がすぐに漏水に直結する訳ではありません
。しかし、現状を放置する事でコロニアル表面は間違いなく劣化を続け、クラックや欠損に至り、やが
ては漏水を誘う原因となり得ます。建物の劣化原因となる、雨、風、紫外線、温度変化を一番強烈に受
ける場所は、屋根であり、屋根表面に塗装を施すことで、外壁と同じように劣化を遅らせる事ができる
ものです。外壁の塗装をお考えになる時には、是非、屋根の点検もすべきです。高所であり、傾斜面の
点検作業ですから、落下の危険があります。高所作業に慣れた私達にお任せ下さい。